模擬口頭試験は「受けて終わり」にしたらもったいない
技術士の口頭試験は、まぐれでは受かりません。
だからこそ、多くの方が模擬口頭試験を受講されます。
12月が試験日の人もいるので、11月の予約も多いです。
一方で、1月が試験日の人もいるので、この2か月の差は大きいです。
ただ、ここで落とし穴があります。
これだと、せっかくの模擬が高い体験料で終わってしまうんですね。
模擬口頭試験の本当の価値は、受けた後の振り返り(レビュー)にあります。
以降は、
- 模擬を受けたあと何をどう振り返ればよいか
- どの観点で自分の弱点をあぶり出すか
- 本番までの時間をどう改善に使うか
を、具体的なステップで整理します。
レビューのゴールは「次に同じ失敗をしない」こと
まず、レビューのゴールをはっきりさせておきます。
- × 「なんとなく反省する」
- ○ 「次に同じ質問が来たら、1ランク上の答えが出せる状態にしておく」
技術士の口頭試験で見られているのは、技術士の合格基準にあるとおり、コンピテンシーです。
つまり、
- 技術士としての実務能力
- 技術士としての適格性
です。
出典:日本技術士会
総合技術監理部門では、このコンピテンシーがある前提で5つの管理技術についての観点が重要になります。
- 経済性管理
- 人的資源管理
- 情報管理
- 安全管理
- 社会環境管理
出典:日本技術士会
レビューでは、単に「答えられなかった質問」を並べるだけでなく、
- なぜ詰まったのか(原因)
- どう言い換えれば伝わったのか(改善案)
- どのキーワードが抜けていたのか(用語)
までセットで整理しておくことが重要です。
具体的なレビューのやり方5ステップ
ここからは、模擬口頭試験を受けた翌日〜3日以内にやってほしい「5ステップ」です。
① 録画を最初から最後まで通しで見直す
- まずはノーカットで一度聴きます。
- 止めずに最後まで聴き、「全体の印象」を感じ取ってください。
- 声のトーンは暗くないか
- 早口・聞き取りづらさはないか
- 回答が冗長ではないか
- 結論が後ろに回っていないか
★ポイント
この段階では、細かい言い回しよりも「受験者としての印象」をメモしておくと良いです。
(例:途中から声が小さくなっている/語尾が全部「〜と思います」になっている など)
② 質問ごとに「何を聞かれていたか」を書き出す
次に、講師から投げられた質問を一問ずつメモします。
- 「業務経歴〇番について、あなたの役割は何でしたか?」
- 「その対策案を採用した理由を、マネジメントの観点で説明してください」
- 「リーダーシップの観点から、どんなリスクをどう抑えましたか?」
ここで大事なのは、質問の「観点」を抜き出すことです。
- リーダーシップの深掘りか
- 技術的なコミュニケーションの方法か
- リスクの評価方法か
- 最近の施策に対する技術者倫理の考え方なのか
観点が整理できると、本番での想定問答リストがそのまま作れます。
③ 自分の回答をざっくり文字起こしする
全部を完璧に書き起こす必要はありませんが、
- 冒頭の一文(結論部分)
- そのあとに続けた根拠・具体例
- しどろもどろになった部分
だけでも文字に起こしてみましょう。
ここでチェックしたいこと
- 結論が最初の一文で言えているか
- 「結論 → 根拠 → 具体例 → 効果・リスク」の流れをコンピテンシーの観点で回答できているか
- 専門用語だけで押し切っていないか
- 技術士らしいキーワード(安全・説明責任・レジリエンス・アセットマネジメント など)が入っているか
④ 「こう答えればよかった」を赤ペンで書き足す
③で起こした文章の下に、理想の答え方を赤ペン感覚で書いていきます。
- 結論文をより短く・わかりやすく
- 抜けていたキーワードを追加
- 「他案との比較」「リスクと対策」「トレードオフ」などを一文追加
例)
(修正前)
「安全管理については、特に問題はありませんでした。」
(修正後)
「安全管理では、まずリスクアセスメントで重大リスクを洗い出し、
その上で“〇〇のリスク”を最重要と位置づけ、□□の対策を実施しました。」
こうやって、**「言い換えテンプレ」**をどんどんストックしていくと、
本番で似た質問が来たときに口が勝手に動いてくれます。
ただし、最終的にはコンピテンシーを意識した回答方法にすることを忘れないでください!
出典:日本技術士会
⑤ 改善ポイントを3つに絞り、次回の目標にする
最後に、レビュー結果から改善ポイントを3つだけ選びます。
例)
- 結論を先に言う(「はい/いいえ+理由」まで一息で)
- 「なぜ?」と聞かれたら、他案との比較を入れる
- 倫理・安全・説明責任や回答が難しい質問には、技術士法第一条を基本に回答
(目的)
第一条この法律は、技術士等の資格を定め、その業務の適正を図り、もつて科学技術の向上と国民経済の発展に資することを目的とする。
この3つを紙に書いて机の前に貼っておくと、
本番までの練習で意識がブレません。
よくあるつまずきポイントと改善のヒント
模擬口頭試験をやっていると、多くの受験者が同じところでつまずきます。
代表的なものを3つ挙げます。
1.業務経歴の「自分の役割」が弱い
- 「会社として対応しました」「上司の判断で…」で終わってしまう
- 自分が何を考え、どう提案し、どう実行したかが伝わらない
→ 改善ヒント
「私は〜を担当し、特に△△の場面で□□を提案・実行しました。」
という一文テンプレを用意しておきましょう。
2.リスクと対策がセットになっていない
- 「リスクは〇〇です」で止まってしまう
- 対策を言っても、優先順位や限界が見えてこない
→ 改善ヒント
「主なリスクは〇〇で、影響が大きいので最優先に対策しました。
具体的にはA案とB案を比較し、□□の理由からA案を採用しました。」
と、比較+理由+優先度までセットにする練習をしましょう。
3.最近のキーワードに触れていない
- 国土交通白書や最近の通達のキーワードが一切出てこない
- 「昔のやり方」に終始してしまう
→ 改善ヒント
模擬後のレビューで、
「この質問なら“流域治水”“国土強靱化”“DX”“アセットマネジメント”のどれを入れられたか」
を、後付けでもいいので整理しておきましょう。
直接的には合否に響かないかも知れませんが、合格を盤石にできます。
これを繰り返すと、本番で自然に口から出てくるようになります。
本番までの1〜2週間をどう使うか
模擬口頭試験のレビューが終わったら、本番までの時間の使い方を決めます。
おすすめの過ごし方
- 毎日1問:
業務経歴から1テーマを選び、「3分プレゼン+想定質問2つ」を声に出して練習 - 2日に1回:
模擬録音を1つ聴き直し、「まだ言い換えたいところ」を1か所だけ修正 - 週末:
オンライン模擬をもう1回受けて、改善結果の確認と微調整
「たくさんやる」よりも、
同じテーマを何度もブラッシュアップする方が伸びます。
まとめ:録音とレビューが合否を分ける
- 模擬口頭試験は受けた後のレビューで価値が決まる
- 録音を聴き、質問の観点と自分の答え方を文字にしてみる
- 「こう言えばよかった」という理想の答えを赤ペンで書き足す
- 改善ポイントを3つに絞り、本番まで繰り返し練習する
口頭試験は、準備した人ほど落ち着いて話せる試験です。
模擬を受けた方は、ぜひこの記事のステップでレビューしてみてください。
そして、まだ模擬を受けていない方は、
「1回受けて、じっくりレビューする」だけでも、
本番の手応えは大きく変わります。
「何となく不安…」を
「ここまでやったから大丈夫」に変えるのが、
模擬口頭試験+レビューの役割です。
あなたの「技術士(建設部門/総合技術監理部門)」合格を、心から応援しています!


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